現代の仕置き人のプライベートは波乱万丈
「俺の名はオリバー・クイーンっ!」
で始まる、アメコミ系のヒーロー物語。なぜか緑ですが。
「俺の名はオリバー・クイーン孤島での地獄の5年間を生き抜き、戻ってきた理由はただひとつ。この街を救うこと・・・・」で、毎回始まります。
ARROWの冒頭は無人島のような場所から始まります。髭で顔がよくわからない主人公が巧みな弓使いで火を点火し、近づいて来た漁船に助けてもらうという最初から映画のクライマックスシーンのようなインパクトを発揮します。
五年前、船の沈没事故で死亡したと思われていた大富豪の青年オリバー・クィーンは、実は生きていて漂流した島で過酷なサバイバルをして戻ってきました。彼を母や妹、友人は温かく迎えるのですが、実はオリバーは自分と自分の父を殺そうとした犯人に復讐すべく、故郷の街から悪者を根絶やしにするために戻ってきたのでした。オリバーは以前の破天荒で奔放な大富豪のボンクラ青年を演じながら、影では身体を鍛えあげ、武器を作り、素性を隠して暗躍するヒーローになるのです。
大富豪の青年が親の仇を取るためにムキムキに身体を鍛え、さらに資産を使って武器を作り暗躍するヒーロー、というのはアメコミには他にもいます。もっと言うならこのドラマ原作の漫画と同じDCからは何度も映画化し、ドラマ化もした蝙蝠がモチーフのヒーローがいます。
なんだまたか、と思う方もいるかもしれませんが、見ればすぐにこのヒーローがいろんな意味で先人たちとは違うと感じます
何故ならこのドラマの登場人物のほとんどが品行方正とはいいがたいからです。
まず、主人公の母は夫と息子がボートで事故(表向きには)に遭い遭難、死亡という間にすでに会社の幹部と結婚しています。
妹は品の良い女の子に見えますが実はドラッグ漬け。父と兄を失い、母との関係もうまくいかずに友人から薬をもらい、それが手放せなくなっていきます。ついには薬を使用したまま自動車事故を起こしてしまうという始末。
さらに、主人公はボートが暗殺者に爆破されたとき、恋人の妹と一緒でした。ボートの事故で生き残ったのはオリバーだけ。オリバーは恋人の妹と浮気をした上、恋人の妹を死なせてしまったという今までのヒーローものでは聞いたことがない設定の持ち主なのです。
ヒーロードラマよりも平日の昼二時くらいに始まるドロドロとした愛憎劇のほうがぴったり当てはまる設定です。
物語は進み、孤独に戦う主人公でしたが、事件に巻き込まれた正義感の強い元軍人の護衛や、主人公の母親が経営する会社のIT技術課の凄腕の女性社員が加わり、ヒーロードラマとしての路線を進みながらも、友人と元カノと三角関係になったりこじれたりしながら話は進んでいきます。
さらに、ここにオリバーの五年間のサバイバル回想がはさまれます。オリバーの卓越した弓の技術と、格闘術はただ島で動物たちとサバイバルしただけでは身に付きません。彼は島で戦っていたのです。オリバーの五年間はそれだけでもアクション映画が一本できそうな壮絶な戦いの日々でした。自由奔放で自堕落な青年が闇の仕置き人になるには十分な体験でした。
このドラマの登場人物は誰しも弱く、それがどこか憎めない魅力を持っていたりします。主人公のオリバーも、五年前の彼は本当に無知で責任感のかけらもないボンボンでした。しかし彼は、戦うことを覚え、復讐という心の拠り所を抱いて帰ってきました。その復讐すらどこか脆く危なっかしく、彼自身も弱さを持った人間なのだと思います。身体を鍛えても、悪者を退治しても、彼がマスクを外して戻る家の家族は脆くて頼りないのです。
家族の絆も取り戻しながら、街も守る。以前のヒーロー物にはマスクを取ったら安らげる場所があったのに、オリバーは両方守らなくてはならないという過酷な道を歩んでいきます。
この先戦いを終えてオリバーに何が残るのか、そんな不安を抱かせる人間関係もオリバーが戦い、同時に守ろうと頑張ると段々と再び絆がつながっていきます。一度見始めたら最後まで見届けたくなるドラマです。
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